
しばらく沈黙していたが、リカの方から語りかけてきた。
リカ 誰だって、そうよ。老後は安らかな生活がしたい。人生の晩年はたとえひとりぼっちでも楽しく暮らしたい。そうじゃない?
M ……
リカ だから、ね、わかるでしょ、この物件を買ったの。ステキなお家。そのうえ、トテモ安いの。二千百万円よ。ただ、この物件、まだ百九十万円の借金は残ってるけど。ローンじゃないの。ホラ。借用書もあるよ。でも百九十万円くらいたいした借金じゃないわ。買っちゃったア。財布の中にお金なんか入ってないけど。あなた、どう。私と一緒に暮らさない? 大切にしてあげる。
登記簿謄本と借用書を彼女は彼の膝の上に置いた。
M 全額借金? 二千百万円と百九十万円。 だったら、借入金は総額二千二百九十万円になる。リカちゃん、借金って、当たり前だけど、放っておくと、どんどん金利が増えていくよ。イヤなことばかり考えてしまうけど、最後は厖大な借金を抱え込んでしまうじゃないか。どうだろう。老後、ふたりで借金地獄を抱え込んだまま、この家から夜逃げして、心中するか、野垂れ死にするなんて。リカちゃん。それに、ほんとに、ボクと一緒に暮らすつもり?
見つめ合うのがためらわれて、うつむいたまま、我知らずMはまくしたてていた。返事がないので、顔をあげると、リカの姿はなかった。
まさか。ひとりごとだったのか⁈
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