すべては動いている

 机が、テーブルが歩きだした。

 夜中に目覚めると、寝室にダイニングテーブルが置いてある。驚きあわててダイニングルームに駆け込むや、中央に勉強机。長年、寝室で使い古した奴が。

 元通りに入れ替えるのは彼ひとりの力に余る。スマホを見ると午前二時。明日だ、誰かに助っ人を依頼しよう。それにしても、超常現象って、あるんだ。彼は圧倒され、愕然としてベッドに横たわってしまった。そのまま、いつのまにか眠りに落ち込んでいた。

 熟睡から目覚めると朝の五時。既に寝室に勉強机は帰っていた。念のためダイニングルームを覗くと、ちゃんと元通りダイニングテーブルが無事帰還している。悪い夢を見ていたのか。だが、待て。ダイニングテーブルの下にいつも寝室の勉強机で使っているペンとノートが落ちている。どうして、だ。そのうえ、ダイニングテーブルの上には、いつも勉強机の片隅に置いている愛用のセカンドバッグが乗っている。象皮のセカンドバッグ。このバッグは二十一年前にこの世を去った彼の母が生前彼にプレゼントした大切な遺品。インド旅行のお土産。もう四十年来持ち歩いていたこの愛用のセカンドバッグも、ひとりだけで動き出したのだろうか。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る