イブリン・アンダーヒルの「内なる生」

 この著者の「神秘主義」という本を、私は数日前に読んだ。極めて興味深い内容で、神の愛から隣人愛へとあふれ流れる生命を、主にキリスト教の聖人達の言葉や実践を通して丹念に描いたものだった。同じ著者の本をもう一冊手にした。

 「内なる生」 イヴリン・アンダーヒル著 金子麻里訳 新教出版社 2017年3月1日第1版第1刷

 この本の内容は、訳者あとがきによると、一九二六年に英国国教会リバプール教区の司祭による会議での講演原稿を、出版に際して著者が若干加筆したものだった。従って、私のような無宗教の人間が読んでどうのこうのという内容ではない。基本的には、キリスト教の聖職者向けのものだった。もちろん、その周辺に生きるキリスト教の信仰者にも教えるところが多々あるのだろう。

 この本の六五頁には、「聖職者の個人の信仰は神中心でなければならない」、そう書いてあるが、おそらくこの言葉は「聖職者」だけに向けられたものではないだろう。すべての信仰者に向けた著者の祈りでもあるのだろう。

 また、四四頁には、リュースブルクの言葉、「ありふれたものすべてに向けた広がりゆく愛」、こんな一節が引用されているが、美しい言葉である。門外漢の私に深くわかるすべもないが、神中心の生活を送る聖職者の祈りの浄化作用があふれて、隣人の世界、自然の世界に融合して行くのだろう。

 著者イヴリン・アンダーヒルの著作はもう一冊翻訳されていて、書名は「実践する神秘主義」だが、残念ながら在庫切れだった。

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