穴から煙が出ていた

脳の中では

あの世も この世も

なかった

右側では 足の裏がない亡妻が歩いていたが

左では 青いサンダルをはいたあの女がタコのように笑っていた

ふたりの髪は入り乱れ

合流し

歪み

あたりいちめん 亀裂が走って

メラメラしていた

いや

違う

もうモクモク痙攣しながら

煙が虚空に駆け上がった

頭頂を突き破って

穴から

一本 吹き出した

わたしはベッドに横たわってすべてを見ていた

穴が開いたままでも

生きていこうと思った

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