中西徹郎の「介護の天気、晴朗なり」を読む。

 最近、私は介護の仕事をしている友達が出来て、彼女から介護の現場の状況を多少耳にしていた。

 そんな折、この本をいただき、強い興味を持って読んだ。

 「介護の天気、晴朗なり」 中西徹郎著 澪標 2017年10月20日発行

 著者は、父の経営していた会社に勤めていたが倒産したため、平成七年から介護の仕事を志し、現在に至っている。この本はその折々に見たこと、感じたこと、考えたことを中心に第一部二十九篇、第二部二十篇、第三部二十篇、合計三部六十九篇のエッセイで構成されている。

 第一部は、介護士としてさまざまな施設で経験した介護体験を語り、いったい介護とは何か、どのようにあるべきか、この根源的な問いを具体的な事例で肉迫する。そして、著者はこのようにわかりやすいが、深い意味を持った回答を書き記している。           

  介護の専門性とは

  • 敬語をしっかりと使うことである
  • 走って走って走り回ることである(本書116頁) 

 第二部は、平成七年三月十日、著者は三十五歳で初めて施設介護実習を十日間経験するのだが、その時の体験記を中心に構成されている。著者の文章を読み進むうち、青少年時代の経験もこの自分自身を形成していて、決して無駄ではなく、自分の中に生き続けているのだ、そんな思いをきっと読者も共有するだろう。

 そして最終、第三部は、平成六年、三十五歳から著者は清掃作業員のアルバイトを始めている。おそらく、介護士として自立出来までの間、数年間を清掃作業員として生活したのだろうか。その間の仕事の体験記を中心にして、少年時代の話など、さまざまな随筆が書かれている。

 この本は、介護を職業にしている人はもちろん、私のように無縁でこの世を渡っている人間にも、この世にはこんな世界もあるよ、そっと耳もとで囁いてくれて、この世の深さを改めて学ぶことが出来るだろう。

 読み終えて本を閉じるとき、人生肯定的な著者の文章は、読者の心を慰め、和やかにしてくれるに違いない。

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