小さな暗黒

それは突然流れ出て来た そう言ってよかったと思う

決して夢ではなかった

妄想でも まして冗談でも

開いていた

理由は知れなかった

驚愕したまなざしでそれを覗いていた あなたと二人だけで

奥は見えなかった

小さな暗黒だった そう言えばいいのか

優しくて とても柔らかそうだった

あの時

思い切って手を伸ばせばよかったのかもしれない

わたしにとって 生涯の不覚だった

もう あなたもこの世にいない

だから流れ出て 開くことはなかった

小さな暗黒は 二度と帰らなかった

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