笑顔が張り付いていた

崩れていく

もう虫一匹いない

チリひとつない

無音で 無抵抗のままで

ことの次第はこうだった……

……人の形をした

緑色の汁があらわれ

やがて紫の泡になり 乳色の薄い膜になって 消えた

あれは

カラスか

カラスが鳴いているのか

一羽ではない 無数だ

その鳴き声も

絶え

ひととき

あの人の笑顔がいちめん張り付いていた

思えば あの時 あの人もまた 無音で 無抵抗のままで

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