月光と父親と

(首のない)子供たちが

黒光りする屋根瓦の先の

春の三日月を

じっと見あげている

すると夜空の遥か彼方から

黄色い自動車に乗った三日月が

ばりばり音をあげて

屋根瓦の上をずっと疾駆してくる

ぼくの好きな三日月よ

今夜一晩悲しいお金の苦労を乗せて

暗いとんがり帽子のような森の涯へ

ちょっと走り去ってくれまいか

(首のない)子供たちが

屋根の下で眠るまで


*一九八〇年一月二十八日、日記帳に書かれた詩。私は三十歳だった。

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