ある悲劇

あれはいったいなんだろう

例えば こんな音がした

 ずるずる

 ざるざる

でも どうやら 日替わりメニューみたいで

 かなかな

 さなさな

だからいったいなんだろうと首をひねるのだった

球状の物体なのは確かだった

大きさから言えばパチンコ玉くらいだったが 決して固くはなかった

また 銀色でもなかった

むしろ柔らかいのだろう 緑色のしずくがテーブルに垂れていた

手のひらで受けると ぺちゃぺちゃした 

理性は壊れた 全身がうずうずしてきた

思わず球体に指を出した 触ってしまった

それからの悲劇は 語るまい

ただ この世から音が消えたことだけはお伝えしておこう

無音だった

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る