アルファさん 第二十四夜

 ボクは少年時代から転落する夢をよく見る。さまざまな場所から転落するのだが、よく見るのは月並みではあるが、こんな映像だった。

 ひとつは、崖から落ちる夢。崖もいろいろあって、一例だけあげてみる。頂上は直径一メートルくらいの円柱形の崖で高さは何キロメートルあるのかわからない、そんな奇妙な崖の頂上から転落することもある。共通しているのはどの崖も底なしで、目覚めるまで落ち続けている。また落ちているな、そう意識した時、崖は消滅する。

 あるいは、高層ビルの建ち並ぶ谷間へ屋上らしきところから墜落するが、底なしの街で、いつまでも落ちている。「屋上らしき」と表現したのは、高層ビル街を空中から俯瞰していて、そこからビルの谷間へ落下していく状況もあるのだった。ビルの屋上ではなく、それを見下ろす虚空から墜落するのだった。やはり、落ちているなと意識した時には、墜落感が消えていく。

 少年時代から晩年に至るまで、何度も何度もビルや崖から転落して、いったいボクはどこへ行くのだろう。

 ひとつだけ言えることがある。

 ボクのこの転落を受け止めてくれるのは、アルファさんの笑顔だった。彼女は微笑みながら両手を広げ、その胸にしっかり抱きしめて、ベッドに降ろしてくれる。

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