四元康祐の「シ小説・鮸膠」を読む。

 こんな作品を読んだ。

 「シ小説・鮸膠」 四元康祐著 澪標 2023年7月25日発行

 散文と詩と短歌を組み合わせて、鮸膠(にべ)という男の世界を構成した作品だった。この世に結びつこうとする言葉と、部屋の片隅でひっそりひとりぼっちの脳裡に浮かぶ言葉を、自伝的なあるいは私的な物語の中へちりばめた本だった。

 全体を眺め渡せば、散文で鮸膠の過去・現在の人間関係や経験などを語り、詩文でそれに対応する象徴的世界を表現した作品だった。

 鮸膠(にべ)という名前の通り、膠(にかわ)のごとくべたべた結びあい、また、鮸(にべ)もなく去ってゆく、複雑怪奇なニンゲンという存在を、あらゆる言葉の形を尽くして網羅せんと、著者は志したのであろうか。

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