カテゴリー:山下徹の詩
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アルファさん 第十六夜
いちめんのお花畑だった。冬の寒い未明、我が家のそばにこんなお花畑があったのだろうか。不思議でならなかった。夢ではないかと思い、頬をつねったりしてみた。強くひねりすぎて、痛い! 叫んでしまった。 そのうえ、満天…詳細を見る -
アルファさん 第十五夜
いろんな音がする。ブザーが鳴ったり、スマホが歌ったり、わけもなく耳の中がミンミン蝉みたいに反響したり。そのたびベッドからガバッと身を起こす。何があったんだ! 音ばかり鳴る、変な夜だった。 けれど暗い部…詳細を見る -
アルファさん 第十四夜
アルファさんの住んでる国へ、よし、一度旅行してみよう、ふいにボクは思いたった。空飛ぶベッドに乗って。 そんな願いを心に秘めて、眼を閉じた。無音のままで、スーッと持ち上がって、屋根がポッカリ開いた。飛び出した!…詳細を見る -
アルファさん 第十三夜
未明に歌を歌っていた。 ハスキーでときどき音程も狂っていたけれど、ボクは魅入られて耳を傾けていた。どう言えばいいのか。夜が明けるまでこのままでいて欲しい、叶わない願いを込めて。 もっと狂っていいと思っ…詳細を見る -
アルファさん 第十二夜
浜辺に車で乗り入れた。ボクラは砂浜の先、海の水際まで歩いた。愛犬は喜んでずいぶん遠くまで駆けだした。泳ぎ出した。黒いラブラドールレトリバーだった。 辺りは白くキラキラ輝いて、たがいの姿も見えないくらいだった。…詳細を見る -
アルファさん 第十一夜
余程疲れていたのだろう。昨夜、八時ごろ寝てしまった。目覚めたら、もう朝の六時。十時間、眠ってしまった。こんなことは、久しぶり。アルファさんはやってこなかった。きっとボクの疲労を癒すために、会いに来なかったに違いない。…詳細を見る -
アルファさん 第十夜
きょうは、林の中を歩いていたが、アルファさんの姿はなかった。蝶の親子が三頭飛んでいた。二十センチくらいある大きな黄色い蝶だった。種類はなんて呼ぶんだろう。不勉強なボクにはわからなかった。モンキチョウよりはるかに大きく…詳細を見る -
アルファさん 第九夜
死んで、よみがえること、あるかしら。 オメガちゃん、実は、わたし、あの世からやってきたの。 アルファさんは真顔でこう言った。 でも、オメガちゃん、わたし、あなたを愛してるのよ。これだけは信じて…詳細を見る -
アルファさん 第八夜
午前二時五十分。 昨夜からまだ考え続けている。 夢はつながっている。 毎晩アルファさんの見る夢とボクの夢がつながっているのだ。 だから、夜がやって来ると、いつもこうして見つめあったり、…詳細を見る -
アルファさん 第七夜
笑っちゃうな、ほんとに、なんでこんなに悩むんだろう、好きなら、好きといえばいいのに。でも、愛しあうって、そんなかんたんなもんじゃないんだ、そうじゃないだろうか。ふたりのひとが、同時に、愛しあうって。 まだ午前…詳細を見る