カテゴリー:山下徹の詩
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アルファさん 第二十六夜
ボクは十五歳、中学三年生になって詩を書きだした。けれど昔から上から目線で書いている文章がキライだった。自分がエライと思って書いている文章なんて糞くらえ、そう思った。そんな文章を読む時間なんてどこにもなかった。社会人に…詳細を見る -
アルファさん 第二十五夜
時折ボクは阪神芦屋駅近くのカラオケスナックにぶらっと一人で立ち寄ることがある。夜十二時まで営業している。新型コロナという奇妙な感染症が流行して以来、客足はめっきり遠のいてしまった。一月二十五日、夜十時、ドアを開けると…詳細を見る -
アルファさん 第二十四夜
ボクは少年時代から転落する夢をよく見る。さまざまな場所から転落するのだが、よく見るのは月並みではあるが、こんな映像だった。 ひとつは、崖から落ちる夢。崖もいろいろあって、一例だけあげてみる。頂上は直径一メート…詳細を見る -
アルファさん 第二十三夜
冬なのに桜が咲いていた。九年前に亡くなった妻、七年前に亡くなった愛犬ジャックといっしょに春になればいつもこの桜並木の遊歩道を歩いた。我が家の北数百メート先にあるキャナルパーク。ちなみに、ジャックは黒いラブラドールレト…詳細を見る -
アルファさん 第二十二夜
夜だけと思っていた。アルファさんと会えるのは夜だけだと。 平日の午前中、ボクはいつも仕事に出ている。もう四十五年余り続けている仕事。ビジネスパートナーでもあった妻を喪ってからは午前十一時ごろ事務所を失礼する。…詳細を見る -
アルファさん 第二十一夜
夜の六甲山を歩いた。もう夜中の十二時は過ぎているだろう。こんな夜更け、誰もいなかった。アルファさんと二人きりだった。 ボクは昔、もう四十年前後になるが、九年前に亡くなったワイフと息子たちと四人、日曜になればよ…詳細を見る -
アルファさん 第二十夜
昼間は、アルファさんと会えない。平日は仕事をしている。恋人や妻なんていないから、土曜日や休日は読書したりネットを見たり散歩したり、詩を書いたりして一人で遊んでいる。もちろん、いっぱいお酒を飲んで。 ずいぶん昔…詳細を見る -
アルファさん 第十九夜
救いなんて、何もない。歳をとればとるほど、この悲しい事情がはっきりわかるはずだ。 一月十九日、未明。ベッドの上で、ボクはさらに考えた。この世には鬼がいても神はいかなかった。慈悲なんてどこにもなかった。 …詳細を見る -
アルファさん 第十八夜
オメガちゃん、流れ星、見たことある? 今夜、二時ごろ、近くで落ちるの。スゴイよ。目の前よ、すぐ目の前で落ちるのよ。 我が家から歩いて十分足らず。夜の芦屋浜に二人で立っていた。百メートル先あたりの暗い海をアルフ…詳細を見る -
アルファさん 第十七夜
この世の大きな特徴は、限りある世界だった。愛しあっていても、一回限りで、必ず生き別れするか、それとも死別する世界だった。 でも、アルファさんは違った。いつまでも愛しあうことが出来るのだった。 アルファ…詳細を見る